テロ攻撃が続いている最中――
テロリストたちの標的は次へと移っていた。
第一次攻撃によって総理官邸と各省庁を含む政府機関の大半が麻痺し、機能不全に陥っていた。さらには警察が総出て事故や事件の対処にあたっている為、捜査のリソースのほとんどが攻撃の対応に追われていた。
それでも、攻撃の対応は迅速であり的確なものだった。
ハッキングを行った『交通システム』や『CTCセンター』のシステムは直ぐに制圧され、テロリストのハッキングを締め出してしまった。事後の対応としては申し分なく、戦略捜査室の事前の対応、そして情報分析官を含むスタッフたちの有能さが見て取れた。
しかし、攻撃はまだ第一段階に過ぎなかった。
攻撃の魔の手は、これから加速度的に増していく。
「やれ」
婁圭虎は本丸とも言える標的に狙いを定めた。
そして。アジトのモニタを見つめながら部下に指示を出した。
複数のモニタの前に座った部下の一人が頷き、ヘッドセットをつけてマイクの調整を始めた。
薄暗いフロアの中に設置された幾つものモニタには、画像や映像が浮かび上がり、そこには次の標的が明確に示されていた。
日本列島と首都圏が映し出された地図の上では、飛行機の形をしたアイコンが無数飛び交っている。他のモニタには、日本各地の空港の滑走路が映し出され、まるで航空管制室を模したようだった。
ヘッドセットをつけた男がマイクに向かって言葉を発する。
「JNA907便。こちら管制センター」
「管制センターどうぞ」
即座にモニタの向こうから反応があった。
「高度三万七千フィートから高度三万フィートに降下してください。悪天候につき乱気流の恐れがあります」
「了解、管制センター。高度三万七千フィートから高度三万フィートに降下します」
JNA907便の機長が、管制センターからの連絡だと思い込んでテロリストの指示を了解した。
その十分後、JNA907便ともう一つ別の飛行機のアイコンが、テロリストたちのモニタから消滅した。
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