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『カクヨム』SFジャンル1位にして、今ネット界を揺るがすSF小説――『横浜駅SF』の感想と、SFにおいての都市をめぐる話!

カクヨム 本の感想 コラム

今回は新企画です。読んだ小説の感想や、それをめぐる雑感などを『コラム』っぽく書いていきたいと思います。

 

記念すべき第一回は、『カクヨムの』SFランキング不動の1位に君臨する――

 

横浜駅SF』です。

 

 

 今ネットを騒がせている『横浜駅SF』を、あなたはご存じだろうか?

 

知らないという方は、是非一度見てみてほしい。

 

そのキャッチ―すぎるトンデモなコピーをみただけで、思わず読んでみたいと思わされてしまうから。

 

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どうだろう?

 

横浜駅が自己増殖? 

日本列島を覆い尽くす?

 

そんな疑問と共に、僕たち日本人がよく見知った横浜駅にいったい何がと考えてしまうはずだ。

 

さらに、あらすじの説明が秀逸である。

 

 

絶え間ない改築の続く横浜駅がついに自己増殖の能力を獲得し、膨張を開始して数百年後の日本。本州の99%は横浜駅で覆われ、SUICA を所有する人間が住み自動改札による徹底した監視下にあるエキナカの社会と、それ以外の僅かな土地に追いやられた人間の社会に分けられていた。青函トンネルでは、増殖を続ける横浜駅JR北海道との終わりの見えない防衛戦が続いていた。非 SUICA 住民達の住む岬で暮らしていた三島ヒロトは、古代地層から発掘された「18きっぷ」を手に、五日間限定での横浜駅への侵入を果たすが…

 

 

本州の99%が横浜駅? 18きっぷ?

 

もうわくわくが止まらないはずだ。

 

この小説は、もともと著者であるイスカリオテ湯葉さんが、「横浜駅は『完成しない』のではなく『絶え間ない生成と分解を続ける定常状態こそが横浜駅の完成形であり、つまり横浜駅はひとつの生命体である』」というネタツイートしたことで始まったものである。

 

まさに、たった一つのアイデアを膨らませてできたものが、この『横浜駅SF』なのである。

 

SFとは設定であるとうことが感じさせられる、センス・オブ・ワンダーに溢れた物語。

 

ここで、『横浜駅SF』の感想にといこうと思ったのだが――

 

感想はすでに出尽くしているように思うし、今さら僕の感想なんかを書いたところで、それは百番煎じにくらにしかならないので、『横浜駅SF』の面白さはご自身の目で確認してもらいた。 

 

文章は古き良きSFを思わせる雰囲気のある硬質な文章で、それでいて読みやすく、分りやすい。設定なんかでつまずくこともないだろうと思う。

 

さぁ、今直ぐ『18きっぷ』を手に『横浜駅』をめぐる駅の旅に出発しようー!

 

 

ここからは、SFにおいての『都市』という存在についての雑感というか――SFの『都市』をめぐる話をしたいと思う。

 

素晴らしいSF小説には、かなり高い確率で魅力的な『都市』が登場している。

 

横浜駅SF』の場合は、その魅力的な『都市』を『駅』と言う形に置き換えているが、大勢の人が暮らしている場所を『都市』と定義するのなら、『横浜駅SF』は魅力的な『都市的SF』といえるだろう。

 

『都市的SF』には、とにかく有名で偉大なるSFが多い。

 

例を上げてみると――SF界の巨星アーサー・C・クラークの『都市と星』。現代ハードSFの雄グレッグ・イーガンの『順列都市』。数々のSF賞を総なめにしたチャイナ・ミエヴィルの『都市と都市』。

 

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分りやすく都市とタイトルについたものを幾つか上げてみたが、他にも――ジョージ・オーウェルの『1984』。村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』。テア・フォン・ハルボウの『メトロポリス』、伊藤計劃の『ハーモニー』など、例を上げればキリが無いだろう。

 

これらの物語に登場する都市をいくつか紹介すると――

 

『都市と星』では出生や死さえも完璧に管理された理想の都市ダイアスパーが登場する。これは物質界に在りながらデータベース的、電脳世界的な構造の都市でもあるため、クラーク先生の先見の明に驚かされるばかりである。

 

恐怖のディストピア世界を描いた『1984』では、全体主義に支配された完璧な監視社会を描いている。ロンドンが物語の舞台なのだが、そこには我々の知っている歴史あるロンドンの都市は存在しない。

 

順列都市』では、グレッグ・イーガンが幾つもの作品に渡って書き続けているコンピュータ上の仮想空間都市が出てくる。人格や記憶などの情報が、コンピュータ上にダウンロードできるようになった未来の物語で、ソフトウェア化された意識が仮想空間で永遠に生き続ける。『都市と星』と併せて読むと、作者の思想の違いが出て面白い。

 

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小説のみならず、SF映画やSF漫画にも魅力的な『都市』が欠かせない。

 

横浜駅SF』の作者が影響を受けたという弐瓶勉の『BLAME!』。藤子・F・不二雄の『ドラえもん』に登場する22世紀の未来都市。『エヴァンゲリオン』の第三新東京市。『ガンダム』のスペースコロニー。『血界戦線』のヘルサレムズ・ロットなど、上げればやはりキリがない。

 

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何故、魅力的なSFには魅力的な『都市』が登場するのかと考えた時に、僕が思い至った結論のような、とりとめのない雑感は――

 

『都市』という物の構造が、物語そのものを内包するからだということです。

 

魅力的な『都市』には、物語において必要な設定――世界観、システム、ガジェットなど、およそすべての要素が詰まっています。

 

物語の要素の全てが詰まった『都市』――それは即ち物語そのものではないでしょう?

 

魅力的なキャラクターや、魅力的な設定、魅力的な展開ももちろん必要ですが、物語の舞台である『都市』が魅力的であれば、それだけ他の要素も魅力的で人目を引くものになるのではないでしょうか?

 

それにキャラクターや設定と言った要素よりも、『都市』の方が物語を構成する要素を内包できる物語としての強度が高く、『器』が大きように思えます。

 

物語を構成する『器』として、『都市』以上に大きな構造、それでいて身近な要素は無いように思えます。

 

つまり――

 

魅力的な物語を描くには、魅力的な『都市』を考えればいいのです。

 

しかし、それができたら苦労しません・・・

 

「それが一番難しいんだよ!」(そんな声が聞こえて来るようです。やめてー、石を投げないでー)

 

 

『大きな物語を内包できる、強い構造を持った都市を考えよう!』

 

 

これを本日の結論にして、このコラムを閉じようと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

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kakuyomu.jp

 

僕が『カクヨム』で連載しているSF小説なのでが、この物語には魅力的な『都市』は出てきません。どちらかと言えば世界観や設定の方に力を入れた物語になっています。

 

全ての子供が夢の中に沈み、自分の好きな夢を見ることができり未来の話です。

 

この世界では、多くの子供たちが夢の中から戻ってきません。現実を放棄して夢の中で気持ち良く生きることを選択しているのです。そしてそのことが社会問題になり、何とか子供たちを夢の中から連れ戻そうと大人たちは手を尽くし、逆に子供たちは全ての子供を夢の中に招待しようと画策しています。

 

ネットがここまで発達し、限りなく多様性を獲得した現代において、このまま多くの人たちがバラバラになってしまったらどうなるんだろう? そんなことを考えながら書きました。

 

よかったらのぞいて見てください。

 

それではー!

 

 

 

 

 

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