「イチロー、早く無人機のコントロールを奪えっ」
衛宮は地面に倒れたままそう叫んだ。
もはや自力で立ち上がることも不可能なくらい、疲弊し憔悴しきっていた。右足からは血が流れ続け、身体中にできた傷が悲鳴を上げるように激痛を放ち続けている。
衛宮の向かい側で血を流して倒れている婁圭虎は、ぴくとも動かず沈黙したままだった。
「分った」
一郎は言われるままに部屋の奥へと進んでいき、いくつものコンピュータやサーバなどが並んだ一画へと辿りついた。
「すごい設備だな? これなら相当のマシンパワーを引き出せるぞ」
一郎はテロリストたちの最新設備を見て、驚いたように漏らした。
そして長机の上に置かれた起動中のコンピュータと、幾つものモニタを見て驚愕した。
一つのモニタには高速で移動する空の映像が映し出され、別のモニタに日本の地図にいくつもの計器の映像――はまるで空港の管制室のようだった。
その瞬間に、一郎は理解した。
これが無人機を操作する仮想環境であることを。
机の上にはキーボードの他に、飛行機の操縦桿のようなハンドルが設置されていた。
一郎はキーボードに触れて急いでコマンドを入力する。
その全てがエラーの文字を吐き出した。
「くそっ……ロックされているな」
一郎はロックを破ろうとキーボードを打ち続け、何とか表層のコントロールだけを取り戻すことに成功した。
無人機のコントロールは奪えないが、これでコンピュータの中身――ソフトウェアやパラメータなどを覗き見ることが可能になった。
一郎はまず、今現在無人機がどのあたりを飛行しているのかを探った。
無人機のGPSの座標を特定し、その座標を地図上に展開する。
「なになに? この無人機は現在……茨城県の上空を飛行中? いったいなんでそんなところを……?」
一郎は急いで無人機の目的地と、現在の無人機がどのような命令を設定されているのかを調べた。
その結果、無人機は攻撃目標を設定されており、攻撃射程圏内に入ったら自動で攻撃を行うように命令を受けていた。
そして、その攻撃目標とは――
「おい……嘘だろ?」
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