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仕事をやめるたった一つのやり方~59話

仕事をやめるたった一つのやり方 小説

第59話 邂逅

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kakuhaji.hateblo.jp

 第一話はこちらから読めます ↑

 

 衛宮蔵人は二階へ上がると同時に閃光弾を投げ入れた。

 

 すでにテロリストの十字砲火を浴びており、突破口を開くには多少強引にでも突入を果たすしかないと判断してのことだった。

 

「いい加減――テロリストのほうが最新鋭の武器を使用している状況は何とかするべきだっ」

 

 衛宮は『戦略捜査室』の装備に悪態を付きながらハンドガンを打ちまくる。

 

 手榴弾すらまともに用意されていない装備状況に、過去に何度も装備の進言をしてきたが、ここに至ったも改善されていないことへの恨み節でもあった。

 

 衛宮はコンクリートの床を滑りながら遮蔽物に隠れているテロリストに銃弾を打ちかますと――ハンドガンを床に投げ捨てて散弾銃を手に取り、もう一人のテロリストを蜂の巣にした。

 

 刹那――衛宮の右斜め辺りから集中砲火が繰り広げられ、衛宮はテロリストが隠れていた遮蔽物に身を隠した。そして、テロリストの武器奪ってアサルトライフルを正確に発射した。

 

 敵からの応射があり、衛宮は腰を下ろして息を整える。

 

「悪くないライフルだ。整備もよくされている」

 

 この時、すでに敵の数は婁圭虎を含め六名に減っていた。

 一階では響が三名を引き付け、二階では衛宮が三名と対峙している。

 二人とも数の上では圧倒的に不利であったが、貨物船が出航する正午丁度までは後十分を切っていた。

 

「まずいな……時間がない。イチローは大丈夫なのか? 下から敵の増援が来ないということは、ナオミが上手く食い止めているんだろうが――」

 

 テロリストが無人機による攻撃を行うなら、自分たちが逃走を行うと同時である可能性が高い。そのことを十分に理解していた衛宮は、急いでこの場を片付けなければいけないと判断した。

 

 衛宮は敵のライフをもって立ち上がり、正確に敵の一人を打ち抜いた。そして弾丸の尽きたライフルを捨ててハンドガンに持ち変える。

 その隙をついて、もう一人のテロリストが衛宮に向ってライフルの弾丸を放つが、それは衛宮の脇と太腿を掠めて虚空に抜けて行った。

 

 衛宮は迷わず前進し、敵に向ってハンドガンを放ち続ける。敵を打ち殺すと同時にマガジンが空になり、弾丸をリロードしようとしたところで――衛宮の太腿を弾丸が貫いた。

 

「ぐううっ」

 

 先にライフルで仕留めたと思っていたテロリストが、最後の悪あがきとばかりに銃弾を放ったのだった。

 

 衛宮は激しい痛みに耐えながらリロードしたハンドガンを連射して虫の息の敵を絶命させると、前方にもう一人の敵を発見して横薙ぎに飛んだ。

 

 衛宮がいた虚空には、ライフルの弾が無数に着弾し――

 一瞬でも判断が遅れていれば、間違いなく死亡していたと衛宮に予感させた。

 

 しかし衛宮はその敵を認識した瞬間に、死の恐怖や肉体の痛みなど、戦闘に必要のないありとあらゆる感情や肉体の無駄な情報を省いた。

 脳内で異常なほどに分泌されるアドレナリンを代表とする神経伝達物質が、衛宮を戦闘を行うためだけのマシーンに仕立て上げていた。

 

 黒い人民服を身に纏った獣のように大柄な男――

 

 そこに立っていたのは、最後に待ち構えていたのは、テロリストの首魁であり、蛟竜のリーダーである婁圭虎だったのだから。

 

 二人は五メートルほど離れた場所で互いに身を隠しなながら、一瞬の好機を狙っていた。

 互いに敵よりも早く銃弾を打ちこむ。

 ただそれだけに全神経を集中させていた。

 

 衛宮が装弾数十三発のハンドガンにたいして――婁圭虎は装弾数三十発のアサルトライフル

 

 武器の差では圧倒的に衛宮が不利だった。

 先ほどから婁圭虎は衛宮の出鼻をくじくように、断続的に正確な射撃を行い続けている。

 衛宮は自身が隠れた遮蔽物から動くに動けず、どうしたものかと頭を悩ませていた。

 

「――くそっ」 

 

 正午までは七分を切り、いよいよその時が迫っていた。

 

 衛宮は天井を見つめて、そこに消防設備のスプリンクラーを見つけた。

 衛宮は一か八かの賭けに出ることにした。

 ハンドガンを握り、天上に向って銃弾を撃ち込み続ける。

 スプリンクラーのセンサーに着弾して誤作動を起こしたスプリンクラーが放水を始め、それと同時にけたたましいサイレンを鳴らした。

 

 衛宮はその瞬間に遮蔽物から飛び出し――両手に持った二丁のハンドガンを連射しながら婁圭虎に駆け出した。

 

 スプリンクラーとサイレンが作動したことで、一瞬反応が遅れた婁圭虎も遮蔽物を飛び出し、ライフルを放ちながら衛宮に駆け出す。

 

 互いの放った銃弾が交差し――二人は至近距離まで接近した。

 そしてお互い弾が尽きたことを知ると、二人は武器を投げ捨てて最も原始的な戦闘へと移行していった。

 

「婁圭虎」

「衛宮蔵人」

 

 互いの名を呼ぶ声が戦場に木霊した。

 

 

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