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マリーと魔法使いヨハン73話

マリーと魔法使いヨハン(完結済み) 小説

073 影との邂逅

 

kakuhaji.hateblo.jp

 第1話はこちらから読めます ↑

 

 ヨハンは今、果てしなく長いアルバトロス内の通路を音を、立てぬよう慎重に、それでも一陣の風のような速さで走っていた。通路は狭くて暗く、天井にはいくつものパイプや配線が数多く走っていた。

 ヨハンは魔力の網を広げ、まるで塵一つ舞うことすら見逃さぬように慎重に辺りに神経を配りながら、通路を突き進んで行く。

 暫く、通路を進んだ後――――

 ヨハンは徐に通路の壁に手を付いた。

 壁の奥に潜む何かを探るように、ヨハンは瞳を閉じて感覚を手のひらに委ねた。

「以前もこの船に入ったときに感じたけど、魔力の流れが普通の空間とは違う?」

 ヨハンは考えながら、顎に手を当てる。

「それに、マリーの気配が無い――――魔力で隠された部屋に閉じ込められているのか?」

 ヨハンは振り返り、肩の上の何もない空間を見つめた。

 ヨハンが見つめたその虚空の空間には、いつもの重みは無く――――

 ヨハンはため息をついて首を振った。

「なかなか、言葉通りにはいかないものだ」

 そう零すと、ヨハンは再び薄暗い通路を駆け抜けて行く。

 再び暫く、ヨハンが何も無い枝分かれの通路を、自らの勘と微かな魔力の名残を頼りに進んで行くと、この飛空挺アルバトロスを、上から下まで大きな縦穴を空けたようり貫いたような、広い空洞に出た。

 ヨハンが入った入り口からは、太く頑丈な鉄の橋が引かれており、橋の繋がる空洞の中心には、大きなボイラーのような機械が、轟々と蒸気を噴出しながら動き続けていた。

 その巨大な機械は天と地に向かって、とても太いパイプで繋がれている。

 鉄の橋は、中心の巨大な機械が置かれた広いスペースから十二本、まるで時計の文字盤のように引かれていて、どの橋も別の入り口へと通じていた。

 ヨハンは辺りに気を配りながら、ゆっくりと空洞の中心へと足を進める。

 ボイラーのような機械の近くまで辿り着くと、ヨハンは手すりに身を委ねて、果てしなく続いているような地下の空洞を見下ろした。パイプが続いた下のほうでは、更に大きな機械が激しい音を立てて蠢き、いくつもの蛇が絡み合ったかのようなパイプの群れが、至る所から地下の機械に向かっていた。

 そして地下に蠢く大きな機械は、青白く眩い光を絶えることなく発していた。

「これが、この船の魔石機関の魔力炉か? 流石にクライストとは比べ物ならないね」

 そう言ったヨハンは瞳を鋭くし、視線を暗闇に飛ばした。

「さて、そろそろ出てきたらどうだい?」

 ヨハンは声色を変えて言った。

 ヨハンの言葉は暗闇に飲み込まれるように消えて行き、暗闇は沈黙でそれに答えました。しかし地下から発せられる光に照らされ、何倍にも巨大化された人影がゆっくりと壁に浮かび上がったた。

 ヨハンの言葉によって浮かび上がった人影は妖しく揺れ、ヨハンにゆっくりと近づいていく。

 その人影は、時計の文字盤――――ヨハンが現れた入り口を“十二時”とするなら、その人影は“三時”の方角から現れた。

「失礼、と言うよりもお見事。さすがは本物の魔法使い――――完璧に気配は消したつもりだったが、お見通しと言う訳か」

 現れた影の主は、軽快な口調で告げた。

「魔法使いを相手にするなら、気配よりも魔力を消さなければ意味が無いよ」

「そうか、それは一つ勉強になった。と言っても、何も君の不意をつこうとした訳ではない――――気を悪くしないでくれ」

 影の主は、まるで親しき友に語りかけるかのような口調だった。

 そして橋を半分ほ渡った影の主は、白いローブを纏いフードを深く被っていた。

「我が名はガラハッド。キャメロットを守護する――――テンプルナイトの一員だ」
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こちらの物語は、『小説家になろう』に投稿していたものをブログに掲載し直したものです。『小説家になろう』では最終回まで投稿しているので、気になったかたはそちらでもお読みいただけると嬉しいです。

 

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