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マリーと魔法使いヨハン64話

マリーと魔法使いヨハン(完結済み) 小説

064 いつの日か

 

kakuhaji.hateblo.jp

 第1話はこちらから読めます ↑

 

 マリーの髪飾りが、何の前触れなくマリーの頭から落ちた。

「――――急に、どうして?」

 慌てたマリーは、髪飾りを急いで拾った。

 まるで不吉な前兆のように、マリーは拾い上げた髪飾りに視線を落とした。そして、再び荒れ狂う空に視線を戻した。

“グランド・エア”の中に向って、まるで吸い込まれるように突入する光景を、マリーは歯を食いしばりながら見つめていた。

 不思議と大聖堂の中に揺れは無く、目の前の光景が再び嵐の中に戻っただけで、何も変化はなかった。しかし、暫くしてマリーの眺めている映像が不規則に揺れはじめた。まるで湖に石を投げたように、映像が波立った。そして、嵐を映していた大聖堂の天井からぷつりと嵐の映像が途絶え、今までの薄暗い大聖堂の天井に戻ってしまった。

 マリーは何が起きているのか、ヴィクルトに尋ねた。

「きっと、嵐の影響で魔力が乱れたんでしょう。それに、この空域はすでに“キャメロット”――――“獅子の戦”時代の魔力の影響を受けているのですね。この空間は、魔法で作られているので影響は受けませんが、きっと船の中は相当揺れているはずですよ」

「この船、沈まないの?」

「大丈夫ですよ。この船の外装は特別な錬金術で作られていて、衝撃にはとっても強いんです。それにこの船を動かしている動力も、大きな魔法石を十個も使用しているので、どんな嵐でも突き進めますよ」

 それを聞いたマリーは、少しだけ考え――――そして躊躇いながらも、それを尋ねるために口を開いた。

「それは――――戦争をするために造られた船だから?」

 マリーの言葉に、ヴィクルトは深く傷ついたよう、瞳を伏せた。そして力なく首を振った後、静かに言葉を紡いだ。

「いいえ、マリーさん――――このアルバトロスは、戦争をするために造られたのではではありません。戦争を起こさないために造られたんです。そして、この私も――――」

 そこまで告げると、ヴィクルトは急に立ち上がり大聖堂のステンドグラスを眺めた。
 そして、未だ不安の消えないマリーに、ヴィクルトは言葉を投げかけます。

「今は分からなくとも、いずれ分かります。きっと、私たちが存在している意味が、いつの日か―――――」

 いつの日か。

 その言葉が遥か遠く、まるで永遠をさしているように、マリーには思えた。

 そしてm今にも消えてしまいそうなヴィクルトの言葉と表情に、マリーはそれ以上何も尋ねることができずにいた。
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こちらの物語は、『小説家になろう』に投稿していたものをブログに掲載し直したものです。『小説家になろう』では最終回まで投稿しているので、気になったかたはそちらでもお読みいただけると嬉しいです。

 

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