マリーと魔法使いヨハン40話
040 お前らぁ、ちったあ、黙らねえかあ
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「なっ、なんですって――――姉さんが、さらわれたって?」
大柄で体格のいい男たちは、夜も明けぬまま半ば強引に起こされたため、眠そうに目を擦りながら、ヨハンの話を聞いていた。しかし話が核心に触れると、いくら鈍感でお気楽な男たちも押し黙り、真剣に話に聞き入った。
そして、マリーがさらわれた事をヨハンに告げられると、皆一様に声を揃えて大声を上げた。
「いったい、誰にです?」
ホズがしゃがれた声で尋ねた。
「分からない――――けど、魔法使いであることは確かだ」
ヨハンは深刻な口調で言って頷く。
事の成り行きと、今回の一件を話終え――――ヨハンは疲れたように瞳を閉じて、肩を落とした。しかし疲れてなどいる暇などもちろんなく、ヨハンは自分を叱咤して再び目を開き、しっかりと現実を見据えなおした。
そして、慌てふためく男達を見つめ、ヨハンは言葉を発しました。
「僕は、何に変えてもマリーを助け出す。その為に、君たちの力を貸してもらいたいんだ」
ヨハンは一旦言葉を止めて翡翠の瞳を鋭く輝かせ、“ニーズホッグ”のメンバーを一人ずつ眺めた。
「君たち“ニーズホッグ”の魂を――――僕に預けてくれ」
ヨハンの言葉を聞き終えると、急に男たちは口を閉ざして――――みんな、一斉に押し黙った。
そしてヨハンはそれ以上何も言わず、ただ頭を深く下げ。
そんなヨハンの姿を見て、ホズが全員を代表するように声を上げた。
「何を言ってるんすか、兄貴? 頭を上げてくだせぇ。姉 さんがさらわれたのなら、あっしらが兄貴に力を貸すのは当然です。それに兄貴の頼みなら――――あっしらは地獄にだって、ご一緒しますよ」
続いてチェシャが――――
「もともと、こんな命、兄貴に拾われたようなものさね、おれっちは兄貴の手にも足にもなるさね」
続いてマッドが――――
「そうっすよ。ニーズホッグは、兄貴あってのチームなんすよ」
「すまない」
その言葉を聞いたヨハンの身体から少しだけ体の力が抜け、それでもこれからやろうとしている事の重大さに、少年の魂の震えが止まることはなかった。
「よしっ、野郎共、我らの女神である姉さんを無事救出し、ニーズホッグの旗を――――大いなる空に掲げるぞ」
「おー」
ホズの号令に、ニーズホッグのメンバーは大きな声を張り上げ、そして天高く手を掲げてみせた。
マリーの救出を誓い合ったニーズホッグのメンバー――――しかし彼らは事の重大さを分かっているのか、まるでお祭りが始まるように浮かれ始め、ハッターはまたしても酒を配り始めた。
その光景を半ば呆れながらも、ヨハンは信頼と感謝の眼差しで彼らを見つめていた。
「全く、君たちのお気楽さには毎回呆れるよ。だけど、何とかやれそうな気分になる」
ヨハンはため息を吐き、小声で呟くように言った。
しかし呆れたように彼らを見つめていても、ヨハンはニーズホッグのメンバーを心から信頼をしていた。
ホズはそんなヨハンの胸の内には一切気づかず――――
今まさに、乾杯の音頭をとろうとしていました。
その時―――
「お前らぁ、ちったあ、黙らねえかあ」
それまで、奥の椅子で腕を組んだまま黙って事の成り行きを見守っていたトールが、突然、腹の底から重低音を轟かせた。
たった今まで、お祭り気分で騒いでいたニーズホッグの大男たちは、トールのその声を聞いて、まるで時間が停止したかのようにピタリと動きを止めた。
そしてみんな一斉にトールの方を向き、一様に脅えて身体を震わせた。
大柄で体格のいい男たちは、夜も明けぬまま半ば強引に起こされたため、眠そうに目を擦りながら、ヨハンの話を聞いていた。しかし話が核心に触れると、いくら鈍感でお気楽な男たちも押し黙り、真剣に話に聞き入った。
そして、マリーがさらわれた事をヨハンに告げられると、皆一様に声を揃えて大声を上げた。
「いったい、誰にです?」
ホズがしゃがれた声で尋ねた。
「分からない――――けど、魔法使いであることは確かだ」
ヨハンは深刻な口調で言って頷く。
事の成り行きと、今回の一件を話終え――――ヨハンは疲れたように瞳を閉じて、肩を落とした。しかし疲れてなどいる暇などもちろんなく、ヨハンは自分を叱咤して再び目を開き、しっかりと現実を見据えなおした。
そして、慌てふためく男達を見つめ、ヨハンは言葉を発しました。
「僕は、何に変えてもマリーを助け出す。その為に、君たちの力を貸してもらいたいんだ」
ヨハンは一旦言葉を止めて翡翠の瞳を鋭く輝かせ、“ニーズホッグ”のメンバーを一人ずつ眺めた。
「君たち“ニーズホッグ”の魂を――――僕に預けてくれ」
ヨハンの言葉を聞き終えると、急に男たちは口を閉ざして――――みんな、一斉に押し黙った。
そしてヨハンはそれ以上何も言わず、ただ頭を深く下げ。
そんなヨハンの姿を見て、ホズが全員を代表するように声を上げた。
「何を言ってるんすか、兄貴? 頭を上げてくだせぇ。
続いてチェシャが――――
「もともと、こんな命、兄貴に拾われたようなものさね、おれっちは兄貴の手にも足にもなるさね」
続いてマッドが――――
「そうっすよ。ニーズホッグは、兄貴あってのチームなんすよ」
「すまない」
その言葉を聞いたヨハンの身体から少しだけ体の力が抜け、それでもこれからやろうとしている事の重大さに、少年の魂の震えが止まることはなかった。
「よしっ、野郎共、我らの女神である姉さんを無事救出し、ニーズホッグの旗を――――大いなる空に掲げるぞ」
「おー」
ホズの号令に、ニーズホッグのメンバーは大きな声を張り上げ、そして天高く手を掲げてみせた。
マリーの救出を誓い合ったニーズホッグのメンバー――――しかし彼らは事の重大さを分かっているのか、まるでお祭りが始まるように浮かれ始め、ハッターはまたしても酒を配り始めた。
その光景を半ば呆れながらも、ヨハンは信頼と感謝の眼差しで彼らを見つめていた。
「全く、君たちのお気楽さには毎回呆れるよ。だけど、何とかやれそうな気分になる」
ヨハンはため息を吐き、小声で呟くように言った。
しかし呆れたように彼らを見つめていても、ヨハンはニーズホッグのメンバーを心から信頼をしていた。
ホズはそんなヨハンの胸の内には一切気づかず――――
今まさに、乾杯の音頭をとろうとしていました。
その時―――
「お前らぁ、ちったあ、黙らねえかあ」
それまで、奥の椅子で腕を組んだまま黙って事の成り行きを見守っていたトールが、突然、腹の底から重低音を轟かせた。
たった今まで、お祭り気分で騒いでいたニーズホッグの大男たちは、トールのその声を聞いて、まるで時間が停止したかのようにピタリと動きを止めた。
そしてみんな一斉にトールの方を向き、一様に脅えて身体を震わせた。
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こちらの物語は、『小説家になろう』に投稿していたものをブログに掲載し直したものです。『小説家になろう』では最終回まで投稿しているので、気になったかたはそちらでもお読みいただけると嬉しいです。