マリーと魔法使いヨハン31話
031 冷たい雨が降る町
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灰色の空は色濃く変わり、弱かった雨脚は激しい音を立ててオレンジ色の街並みを打ちつけた。町には先ほどまでの賑やかさや華やかさはなくなり、重たく湿った空気によって包まれていた。
マリーが足を引きずりながら歩いている灰色の通りは、いつもよりも暗く陰惨としていた。
雨は容赦なくマリーの震える体を打つけ、激しく体を濡らしていく。不思議な引っ掻き傷のような壁も、今はマリーを嘲け笑う口元に見え、両側から壁が押し寄せてきて自分を押し潰してしまうんではないか――――マリーは不安そうに両側の壁に視線を向けた。
ゆっくりと坂を下るマリーは、無意識のうちにドロシーの家を目指していた。
坂を下り終わり曲がり角に差しかかると、マリーはびしゃびしゃに濡れた顔と目を擦り、自分の目を疑うように目を見開いていた。
マリーは呆然とした。
それは、そこにはあるはずのもの――――または空間と呼ぶほうが正しいそれが、そこにはなかったからだ。
「そんな――――」
言葉を失って唖然とするマリー――――そこには、マリーの記憶にあるはずのドロシーの家がなかった。
変わりにそこに建っていたのは、オレンジ色のレンガ造りで、屋根に煙突のある家だった。
マリーは心細そうに辺りを見回す。
確かに、この場所に違いなかった。
間違いなく同じ場所だった。
ドロシーの家の向かいに大きく曲がった太い木が立っていたのを、マリーはしっかりと覚えてた。
マリーは震えた手をポケットに入れて、中から魔法の地図を取り出した。そしてマリーは願うようにドロシーの家と――――頭の中で念じた。
しかし、地図に浮かび上がったのは緑色の文字で――――
unknown
「なんでよ?」
マリーはもう一度、頭の中でドロシーの家と念じる。
しかし、地図に浮かび上がった文字は変わらず――――
unknown
マリーは必至になって何度も何度も、まるど足元にしがみつくように念じ続けてみたが、地図に浮かび上がる文字は変わらなかった。
マリーは裏切られたかのような気持ちなった。
「どうして、どうしてなの? ここに、ここのなのに? ここに、あったのに―――――」
マリーは、雨音にかき消されてしまいそうな小さな声で呟き、ふたたび雨の降る町を、さまよって行った。
そして、マリーは冷たい灰色の町に吸い込まれるように消えて行った。
マリーが足を引きずりながら歩いている灰色の通りは、いつもよりも暗く陰惨としていた。
雨は容赦なくマリーの震える体を打つけ、激しく体を濡らしていく。不思議な引っ掻き傷のような壁も、今はマリーを嘲け笑う口元に見え、両側から壁が押し寄せてきて自分を押し潰してしまうんではないか――――マリーは不安そうに両側の壁に視線を向けた。
ゆっくりと坂を下るマリーは、無意識のうちにドロシーの家を目指していた。
坂を下り終わり曲がり角に差しかかると、マリーはびしゃびしゃに濡れた顔と目を擦り、自分の目を疑うように目を見開いていた。
マリーは呆然とした。
それは、そこにはあるはずのもの――――または空間と呼ぶほうが正しいそれが、そこにはなかったからだ。
「そんな――――」
言葉を失って唖然とするマリー――――そこには、マリーの記憶にあるはずのドロシーの家がなかった。
変わりにそこに建っていたのは、オレンジ色のレンガ造りで、屋根に煙突のある家だった。
マリーは心細そうに辺りを見回す。
確かに、この場所に違いなかった。
間違いなく同じ場所だった。
ドロシーの家の向かいに大きく曲がった太い木が立っていたのを、マリーはしっかりと覚えてた。
マリーは震えた手をポケットに入れて、中から魔法の地図を取り出した。そしてマリーは願うようにドロシーの家と――――頭の中で念じた。
しかし、地図に浮かび上がったのは緑色の文字で――――
「なんでよ?」
マリーはもう一度、頭の中でドロシーの家と念じる。
しかし、地図に浮かび上がった文字は変わらず――――
マリーは必至になって何度も何度も、まるど足元にしがみつくように念じ続けてみたが、地図に浮かび上がる文字は変わらなかった。
マリーは裏切られたかのような気持ちなった。
「どうして、どうしてなの? ここに、ここのなのに? ここに、あったのに―――――」
マリーは、雨音にかき消されてしまいそうな小さな声で呟き、ふたたび雨の降る町を、さまよって行った。
そして、マリーは冷たい灰色の町に吸い込まれるように消えて行った。
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こちらの物語は、『小説家になろう』に投稿していたものをブログに掲載し直したものです。『小説家になろう』では最終回まで投稿しているので、気になったかたはそちらでもお読みいただけると嬉しいです。