マリーと魔法使いヨハン14話
014 年頃の女の子
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午後、マリーは外に買い物に出掛けることにした。
先程、ロキが話してくれた事件がマリーはずっと気になっていたのだが、ロキに尋ねても、あれ以上は何も教えてくれないので、ついにマリーは話を聞くのを諦めることにした。
ロキはいつも肝心なところを話してくれないので、その度にマリーは煙りに巻かれたような気分になった。
マリーは鏡に写る自分を眺めながら、ヨハンがどうして犯人を逃がしたのか考えた。
本物の魔法使いだから――――ロキはそう言っていたけど、本物の魔法使いとはどういったものなのか、マリーはずっと考えていた。
この世の探求者にして、この世ならざる世の理解者。全てを受け入れ、そのうえで全てを疑う――――考えれば考えるほど、マリーの頭の中の糸はこんがらがり答えが遠のいて行くようで、とうとうマリーは考えることをやめてしまった。
そして、マリーは鏡に写る自分の姿に意識を向ける。
鏡に写るマリーの姿は、水色の地に花柄模様が鮮やかなワンピースに身を包み、足元には白いキャンバスにたくさんのスパンコールがあしらわれた靴。どちらも、昨日ヨハンがマリーのためにヨハンが買って来てくれたものだった。
マリーの黒い髪の毛には、大きな翼に幾つもの花が飾られた髪飾りがきらりと輝いている。その髪飾りは川辺にやって来た水鳥のような、もの静かな可愛らしさがあった。不思議なことに、その髪飾りはまるで重さがなかった。鳥の羽のように軽のに、触った感じはずっしりとした金属のそのものだった。
マリーは鏡越しに見る自分の姿に驚いた。そこに映る自分の姿は、今まで一度も見たこともないような、年頃の女の子らしい姿だった。いつも身につけていた黒い制服の使用人ではなく、明るく華やかな年頃の女の子がそこには立っていた。
マリーはそんな自分の姿に違和感や恥じらいを感じつつも、今までとは違う自分の姿に感激し感動していた。真っ黒で、重たくて、気に入らなかったこの髪の毛も、今のマリーにはとてもよく似合って見えた。
「似合うじゃないか」
鏡に夢中になっているマリーにロキが声を掛けた。しかし鏡越しに見えたロキの姿に、マリーは驚いて「キャー」と悲鳴を上げました。
「何を驚いている? 私だ」
悲鳴を上げるマリーを前にしても、ロキは今までと少しも変わらない、落ち着き払い、そして淡々とした口調で言葉を発した。
「えっと、ロキなの? どうしたの、その姿?」
マリーは振り返って、見る影も無いロキの姿を凝視した。
今、マリーの目の前にいるロキの姿は、いつもの黒い子猫の姿ではなく、二十代後半ぐらいの男性の姿をしていた。すらっとした細みの体格で、身長は小柄なヨハンと比べずいぶん長身だった。長い黒髪を全て後ろになでつけ、その痩身を包み込むシャツからネクタイ、靴に至るまでの全てが黒で統一されていた。
ロキの面影のある部分と言いえば、紫色に輝く鋭い瞳ぐらいで、その他は全くロキの面影は見当たらなかった。
「町に出掛けるのに猫の姿ではいろいろ不便だろう? それに、重たい荷物をマリーに持たせるわけにはいかない」
「優しいのね」
「当然だ。これも紳士のつとめだ」
「そう、でも――――」
マリーは引きつった声で、言いづらそうに言葉を続けた。
「でもロキ、その格好怖いわよ。それに私たち並んで歩いたら変じゃないかしら?」
マリーは不安そうな声を出した。
「そうか、私はあまり気にならないが」
「そう、あなたがいいなら私はいいの。さぁ、行きましょう」
マリーは前身黒ずくめのロキに違和感を感じつつ、この姿のロキと一緒に歩くことに気乗りしなかった。しかし、今更ロキに猫の姿に戻ってとも言えないので、あまり深く考えずに町へ出ることにした。
先程、ロキが話してくれた事件がマリーはずっと気になっていたのだが、ロキに尋ねても、あれ以上は何も教えてくれないので、ついにマリーは話を聞くのを諦めることにした。
ロキはいつも肝心なところを話してくれないので、その度にマリーは煙りに巻かれたような気分になった。
マリーは鏡に写る自分を眺めながら、ヨハンがどうして犯人を逃がしたのか考えた。
本物の魔法使いだから――――ロキはそう言っていたけど、本物の魔法使いとはどういったものなのか、マリーはずっと考えていた。
この世の探求者にして、この世ならざる世の理解者。全てを受け入れ、そのうえで全てを疑う――――考えれば考えるほど、マリーの頭の中の糸はこんがらがり答えが遠のいて行くようで、とうとうマリーは考えることをやめてしまった。
そして、マリーは鏡に写る自分の姿に意識を向ける。
鏡に写るマリーの姿は、水色の地に花柄模様が鮮やかなワンピースに身を包み、足元には白いキャンバスにたくさんのスパンコールがあしらわれた靴。どちらも、昨日ヨハンがマリーのためにヨハンが買って来てくれたものだった。
マリーの黒い髪の毛には、大きな翼に幾つもの花が飾られた髪飾りがきらりと輝いている。その髪飾りは川辺にやって来た水鳥のような、もの静かな可愛らしさがあった。不思議なことに、その髪飾りはまるで重さがなかった。鳥の羽のように軽のに、触った感じはずっしりとした金属のそのものだった。
マリーは鏡越しに見る自分の姿に驚いた。そこに映る自分の姿は、今まで一度も見たこともないような、年頃の女の子らしい姿だった。いつも身につけていた黒い制服の使用人ではなく、明るく華やかな年頃の女の子がそこには立っていた。
マリーはそんな自分の姿に違和感や恥じらいを感じつつも、今までとは違う自分の姿に感激し感動していた。真っ黒で、重たくて、気に入らなかったこの髪の毛も、今のマリーにはとてもよく似合って見えた。
「似合うじゃないか」
鏡に夢中になっているマリーにロキが声を掛けた。しかし鏡越しに見えたロキの姿に、マリーは驚いて「キャー」と悲鳴を上げました。
「何を驚いている? 私だ」
悲鳴を上げるマリーを前にしても、ロキは今までと少しも変わらない、落ち着き払い、そして淡々とした口調で言葉を発した。
「えっと、ロキなの? どうしたの、その姿?」
マリーは振り返って、見る影も無いロキの姿を凝視した。
今、マリーの目の前にいるロキの姿は、いつもの黒い子猫の姿ではなく、二十代後半ぐらいの男性の姿をしていた。すらっとした細みの体格で、身長は小柄なヨハンと比べずいぶん長身だった。長い黒髪を全て後ろになでつけ、その痩身を包み込むシャツからネクタイ、靴に至るまでの全てが黒で統一されていた。
ロキの面影のある部分と言いえば、紫色に輝く鋭い瞳ぐらいで、その他は全くロキの面影は見当たらなかった。
「町に出掛けるのに猫の姿ではいろいろ不便だろう? それに、重たい荷物をマリーに持たせるわけにはいかない」
「優しいのね」
「当然だ。これも紳士のつとめだ」
「そう、でも――――」
マリーは引きつった声で、言いづらそうに言葉を続けた。
「でもロキ、その格好怖いわよ。それに私たち並んで歩いたら変じゃないかしら?」
マリーは不安そうな声を出した。
「そうか、私はあまり気にならないが」
「そう、あなたがいいなら私はいいの。さぁ、行きましょう」
マリーは前身黒ずくめのロキに違和感を感じつつ、この姿のロキと一緒に歩くことに気乗りしなかった。しかし、今更ロキに猫の姿に戻ってとも言えないので、あまり深く考えずに町へ出ることにした。
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こちらの物語は、『小説家になろう』に投稿していたものをブログに掲載し直したものです。『小説家になろう』では最終回まで投稿しているので、気になったかたはそちらでもお読みいただけると嬉しいです。