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仕事をやめるたった一つのやり方~61話

仕事をやめるたった一つのやり方 小説

第61話 三者三様

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kakuhaji.hateblo.jp

 第一話はこちらから読めます ↑

 

 この時、戦場にいる三者の思惑はそれぞれだった。

 

 衛宮蔵人を攻めたて、あと一歩でその息の根を止められると確信した婁圭虎は、突然の介入者を警戒せざるを得なかった。

 

 婁圭虎の猛攻を防ぎながらも、この不利な状況を覆す術を見つけられずにいた衛宮は、婁圭虎の不自然な視線の動きから自分の背後に何者かが現れたことを知り、それが鈴木一郎であると確信した。

 

 戦場に足を踏み入れてしまった場違いなシステム・エンジニアの鈴木一郎は、至近距離でナイフを振り回しながら戦闘を行っている二人を見て硬直し、一歩も動けなくなっていた。

 

 三者三様の思惑が交錯し、戦闘に新しい流れをもたらした。

 

 婁圭虎は鈴木一郎の手に握られたハンドガンを見て、形成が不利になったことを悟った。衛宮蔵人の背後に控えた突然の介入者を始末しなければ、銃弾を撃ち込まれて地面に伏せるのは自分であると判断した。

 

 婁圭虎は右手に持ったナイフを投擲しようと、一郎に向けて腕を振りかざそうとした。

 

 その隙を逃さなかったのは衛宮だった。

 

 ずっと一瞬の隙だけを狙っていた衛宮は、振りかざされた獣の右腕に向ってナイフによる斬撃を放った。

 

 しかし、婁圭虎も抜け目は無かった。

 右手のナイフを投擲すると同時に、左手に持ったナイフを衛宮の脇腹に向けて突き出していた。

 右手のナイフを防げば自身が傷を追い、左のナイフを防げば背後の一郎は死を迎える。

 

 究極の選択だった。

 

 婁圭虎はこの戦闘において常に先の先を取り、自身が有利な状況をつくり出してきた

 しかし、この時の衛宮は婁圭虎の予測を上回る、一か八かの後の先によって、この状況を覆した。

 

 衛宮は婁圭虎の右手首を切り裂き、ナイフの投擲を防ぐと同時に、使い物にならなくなっていた右足を持ち上げ、左脇腹へのナイフの刺突を防いだ。

 

「ぐおおおおおお」

 

 衛宮の右足に深々とナイフが刺さり、婁圭虎は「馬鹿な?」と表情を歪める。

 そして、即座にナイフを引き抜いて次の攻撃に移ろうとしたが、そのナイフを引き抜くことはできなかった。

 

 衛宮はナイフを受けた右足の太腿の筋肉を限界まで硬直させて、ナイフが肉体から引き抜かれるのを一瞬防いだ。

 

 戦況を覆すには一瞬でよかった。

 

 衛宮は婁圭虎の右手首を切り裂いたナイフを獣の肩口に突き刺し、そのまま動脈を切り裂こうと力を込める。

 

「ぐおおおおおおおお」

 

 本能的に死を予感した獣は、呻き声と共に最後の力を振り絞った。

 右足で衛宮を蹴り出すと、婁圭虎はそのまま地面に倒れ込み、そして地面を這った。

 

 大きく後ろに転げた衛宮は、右足の負傷で起き上がることができずにいた。

 

 婁圭虎は深々と刃の刺さった肩口から大量の血をこぼしながら、地面を這い続けて手を伸ばした。

 獣が手を伸ばした先にはテロリストの死体があり、その死体のそばにはアサルトライフルが転がっていた。

 

イチロー、銃を投げろ」

 

 婁圭虎の意図を悟った衛宮は、即座に振り返って呆然と立ち尽くしたままでいる一郎に怒鳴り声を上げた。

 

「じゅ、銃って……これを投げるのか?」

 

 五メートルほど離れたところに立っている一郎は、自分が握っているハンドガンを見て戸惑ったように言い、そして直ぐに状況を理解した。

 

「――衛宮、受け取れっ」

 

 一郎は衛宮に向けて銃を投げた。

 見事な放物線を描いて投げられた銃を受け取った衛宮は――即座に銃を構えた。

 そして、婁圭虎に向けてトリガーを引いた。

 

 それと同時に、婁圭虎もアサルトライフルを構えてトリガーを引いた。

 

 二人の放った銃弾が交錯し――

 

 そして、戦闘の終わりを告げた。

 

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