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仕事をやめるたった一つのやり方~54話

仕事をやめるたった一つのやり方 小説

第54話 恩人

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kakuhaji.hateblo.jp

 第一話はこちらから読めます ↑

 

 

 東京湾コンテナ埠頭へと向かう二人。

 

 車を運転する衛宮の後ろでは、一郎が司馬秦とアラン・リーから回収したデータの解析と分析を行っていた。

 無人戦闘機の設計データや基本性能、無人機を乗っ取るための装置の設計図などが端末のモニタには映し出され、一郎はその画面を食い入るように見つめてはいるが、意味が分らないと頭をかいた。

 

「一郎、何か分ったか?」

「……いや、さっぱりだ」

 

 一郎は首を横に振り、はっきりと告げた。

 

「そもそも、俺は兵器の専門家じゃない。こんな設計図やらを見せられたって、何一つわかることなんてないに決まってる」

「分ったことだけ教えてくれ」

 

 衛宮にそう言われて、一郎は必死に頭を回転させた。

 

「この『XJ―00』っていう無人機に関しては、本当に意味不明だ。無人機を乗っ取る装置に関しても……無人機を遠隔で操作できるってことくらいしか分らない」

「テロリストからコントロールを奪うことは可能なのか?」

「外部からの侵入は難しいだろな。でも……どこか別の場所に無人機を操作するための仮想環境を構築しているはずだから、そこからなら無人機のコントロールはできると思う」

「つまり……今向っている東京湾コンテナ埠頭にその仮想環境が無ければ、無人機の攻撃は防げないという事か?」

「そうなると思う。でも……テロリストは今さらどこを攻撃するって言うんだ?」

「それは分らない。もしかしたら国外へ脱出する為の護衛に、無人機を待機させているのかもしれない」

「つまり……俺たちは今、無人機が上空で待機しているかもしれないテロリストのアジトに向かっているってことか?」

「そうなるな」

「吐きそうになってきたよ」

 

 一郎は青ざめた顔で言った。

 

「それより衛宮……今から合流する響って女と、お前の元上司だったっていう敷島って人は、本当に信用できるのか? お前は情報が漏れる心配をしていたんだろ」

 

 一郎は少しためらいがちに尋ねた。

 

「ああ。響直海は僕のパートナーだった。よく知っているし、二人で何度も現場に出た。彼女以上に信用できる人間は、今のところお前を除いてはいない」

「そうか」

 

 一郎は照れ臭そうに頬をかいた。

 

「じゃあ……敷島って人は大丈夫なのか?」

「敷島さんは僕の恩人だ」

「恩人?」

「ああ、僕を戦略捜査室にスカウトしてくれた。海外の民間軍事会社で傭兵として働く僕に、もう一度この国の為に働く機会をくれた人だ」

 

 衛宮は今までよりも穏やかな口調でそう言った。

 

「敷島さんは元陸上自衛隊の情報部出身で、この国の防衛体制の改革を長年にわたって訴えてきた人だ。戦略捜査室の創設も、敷島さんの悲願だった」

「じゃあ、その敷島って人が戦略捜査室を作ったのか?」

「ああ、そうだ。テロ攻撃に対処できる包括的な捜査機関――そして、その設立によって国家を守る。その第一歩が戦略捜査室で、今後多くの捜査権限を委譲され、情報収集や諜報部門を設立することによって、組織をより強固なものにしようとしていた」

 

 衛宮の言葉には敷島への尊敬の念が深くに滲んでいた。

 

「でも……僕は半年前のテロ事件を解決する際、命令無視や法律違反を繰り返して敷島さんに迷惑をかけた。二度と合わす顔なんてないと思っていたが……まさか再会がこんな形になるとはな」

「でも、お前のおかげで半年前のテロは防げたんだろ。それに今回だって……お前のおかげでテロが解決するかもしれない」

 

 一郎は衛宮をフォローするように言った。

 

「かもしれないが、僕は戦略捜査室を危険に晒した。僕のせいで戦略捜査室が解体される可能性だってあったし、僕が裁判にもかけられず、逮捕されず今こうしているのも、全部敷島さんのおかげだ」

「そうか」

 

 一郎はそれ以上何も言わずにただ頷いた。

 

「敷島さんは本物の愛国者だ。心配しなくていい」

 

 衛宮は力強く言ってアクセルを強く踏んだ。

 

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