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仕事をやめるたった一つのやり方~42話

第42話 悪夢

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kakuhaji.hateblo.jp

 第1話はこちらから読めます ↑

 

「――クリア」

「――クリア」

「――制圧完了」

 

 十五分後。

 

 捜査官の無線機には『クリア』と『制圧完了』の言葉が飛び交っていた。ビル内の全てのフロアの制圧を完了し、テロリストの殲滅もほぼ終えていた。

 

「一班、二班、三班、作戦本部に状況の報告を。それと、まだテロの首謀者である婁圭虎ロー・ケイフーが見つかってない。各班から捜索隊を出して必ず捕えて。まだ息のあるテロリストはいる?」

 

 響が無線で告げると、直ぐに反応があった。

 

「こちら三班、テロリストを三名拘束しています」

「医療班は必要?」

「二名重症ですが、一名は軽傷です。今直ぐ尋問を行えます」

「了解。医療班、至急三班の所に向って。尋問は私が行う」

 

 響が三班の所に向おうとすると、別の無線が入った。

 

「響捜査官、こちら二班です。至急こちらにきてください。緊急事態です」

「何か見つかった?」

「はい。しかし……ご自身の目で確認していただくのが良いと思います。地下のフロアです。作戦本部には状況を報告済みです」

「了解。そっちに急行する。三班、尋問はそちらで行って。婁圭虎のことを最優先に聞いて」

「三班了解」

 

 響は急いで地下のフロアへと向かった。

 

 響直海は爆発や銃撃で汚れた顔を拭いながら、この状況に違和感を覚えていた。

 

 テロリストたちの抵抗があまりにも少なかったからだ。そして、こちらの損傷や損耗があまりにも軽微であり――重症者二名、軽傷者六名という、事前の作戦予想ではありえない結果が出ていた。

 

 敵は訓練された特殊部隊の兵士で、最新鋭の武器を装備しているはずだった。戦闘は苛烈を極め、多くの死傷者が出るはずだった。そしてテロリストは大量の爆弾や爆薬を所持しており、それはこのビルそのものを爆破するに足る物量だった。

 

 しかし、テロリストたちは爆弾や爆薬を使用するどころか、銃で狙った相手を撃つこともままならないチンピラばかりで、間違いなく訓練された兵士ではなかった。

 

 作戦終了後の状況報告では、テロリストたちの中に訓練された兵士と思われる人物が数名いたという情報が共有されていたが、部隊と呼ぶには程遠かった。

 

 事前の情報では――婁圭虎率いる『蛟竜』の部隊は二個分隊、少なくとも二十名前後の人数が国内で確認されていた。

 

 この状況で考えられることは、ただ一つだけだった。

 

 婁圭虎は部隊を連れてすでにこの場所を後にしている。

 

 それもこちらがこのビルを包囲し、五キロ圏内を封鎖する前に。

 

 響の脳裏に、衛宮蔵人の言葉を過った。

 

「ナオミ、一から捜査を見直せ」

 

 その言葉が正しかった可能性が浮上し始めていた。

 

 自分たち戦略捜査室は、とんでもない見落としをしていたのかもしれない。

 その過ちのせいで、今この国が重大な危機に瀕しようとしているとしたら?

 

 響直海は激しい焦燥と恐怖に駆られていた。

 

 彼女は爪を立てて頭を強くかきむしり、その後で親指の爪と皮を血がにじむまで噛んだ。その痛みで自分を落ち着けようと、ストレスやプレッシャーから逃れようとした。

 

 しかし、目の前に現れた悪夢のような現実からは――

 

 目を逸らすことも逃げることもできなかった。

 

「――これは?」

 

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