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仕事をやめるたった一つのやり方~37話

仕事をやめるたった一つのやり方 小説

第37話 テロ攻撃

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kakuhaji.hateblo.jp

 第一話はこちらから読めます ↑

 総理官邸では、今しがた起きた――

 

 テロ攻撃の第一報に激震が走っていた。

 

 今から十五分前――東京都内の信号機がハッキングされ、多数の交通事故が巻き起こった。事故の数は五十件に及び、死傷者の数は運転手や通行人を合わせて七十名を超えていた。

 

 さらに『列車集中制御装置』と呼ばれるシステム(鉄道の信号や分岐器、連動装置などを遠隔制御している)が設置された『CTCセンター』が、同じくハッキングによって乗っ取られ、鉄道同士の接触事故が相次いで起こった。

 

 幸い車掌の迅速な判断と『ABS』と呼ばれる『自動ブレーキ』によって、衝突や脱線などの大事故は間逃れたが、それでも死傷者の数は数十名に上っていた。

 

 現在、警視庁と所轄の警察官などが総動員で交通整理に当たり、CTCセンターの方は乗っ取られたシステムを一度ダウンさせ、都内を走る鉄道の多くを運行停止にすることで被害の拡大を防いでいた。

 

 日本国内初とも言える大規模なサイバーテロ攻撃であり、午前七時という通勤ラッシュ時に行われたテロ攻撃の被害は甚大であり、多くの東京都民、そして日本国民が恐怖と混乱に陥っていた。

 

 東京都全体の機能が凍りついたように麻痺し、テレビのニュースでは事故現場の様子がすでに報道され、その悲惨で凄惨な現場の様子が克明に映し出されていた。

 

 大きな交差点の中央で何台もの車が衝突し合っている。玉突き事故が勃発し、事故を防ごうと路肩に突っ込んだ車もあった。

 

 歩行者数名が大型車に轢かれた瞬間の現場の映像は、見るも無残だった。

 

 線路の途中で停車をした電車の車内で、人々が争う映像がインターネット経由で拡散されている。接触を起こした電車から黒い煙が上がり、車内は悲鳴や喧騒に包まれていた。

 

 パトカーや救急車、消防車が何台も駆けつけ、現場は騒然としていた。

 小さな子供の泣き声が、いつまでも続いていた。

 

 阿鼻叫喚とはまさにこのことを言うのだろうという光景が、次から次へとテレビやインターネットに流され続けた。

 

「――国民に直ぐに声明を発表します。草案を急がせなさい」

 

 テロ攻撃の最中――総理官邸の執務室では、葛城首相が沈痛な表情を浮かべて官邸のスタッフたちに激を飛ばしていた。

 

「『戦略捜査室』の捜査はどうなっているのですか? テロ攻撃はすでに起きてしまっているのですよ」

 

 首相が怒りに震えながら補佐官である鴻上に尋ねると、禿げ頭の補佐官は厳しい表情を浮かべて額に手を当てた。

 

「捜査は進展しているようですが……テロリストの居場所の特定にはまだ至っていないようです」

「まだ特定には至っていない? 我々はすでに攻撃を受け、大量の死傷者を出しているのですよ。この期に及んで、特定などと言う曖昧な表現は許されません。今直ぐテロリストどもを捕まえなさいと――戦略捜査室に厳命なさい」

「……それは、もちろん分っております。彼らもベストを尽くしています。この短時間でシステムを奪い返し……被害の拡大を防ぐことに成功しました」

 

 鴻上は怒りで震える首相を宥めるために、今現在の功績を持ち出して説得にかかった。

 

 事前の攻撃予測に基づく予防と対策が功を奏し、すでに事態の収拾はある程度付き始めていた。

 乗っ取られた『CTCセンター』のシステムも奪い返し、現場の警察官によって二次的な被害も防げていた。

 

 しかし、葛城首相は険しい顔のまま首を横に振った。

 

「成功した? いいえ……これは断じて成功ではありません。我々は甚大な被害を出し、多くの血を流してしまった」

 

 補佐官は首相の説得は不可能だと悟った。

 

「もちろんです。わかりました……戦略捜査室に伝えます」

 

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