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仕事をやめるたった一つのやり方~29話

第29話 天命を待つ

 

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kakuhaji.hateblo.jp

 第一話はこちらから読めます ↑

 

「首相……そろそろお休みになられたほうが?」

 

 総理官邸の執務室では――深夜零時を回った後も執務に追われる首相の姿があった。

 補佐官の鴻上が何度か休むように進言したが、葛城首相はその度に首を横に振った。

 

「関係各省に警戒レベルの引き上げを命じたばかりで、私が今休むわけにはいきません。それより……中国大使から何か情報は上がって来てないのですか?」

「今のところは……」

「いったい何故こんなに時間がかかるのですか?」

 

 首相は不快感を露わにして言った。

 

「大使の言い分としては……郭白龍の粛清に関わった中国政府の高官が、明日内々に米国に視察に行くようなのです。そのせいで、上手く情報が掴めないようなのです……」

「はぁ……では、誰か別の、情報を知る者とコンタクトを取るように、大使に伝えてください」

 

 首相は重すぎる溜息を吐いた。

 

「かしこまりました。しかし……おそらく中国側は、情報の価値を吊り上げているのでしょう」

「こんな時でも駆け引きとは……」

 

 首相は首を横に振った。

 

「政治とはそう言うものです」

 

 老練な補佐官が首相を嗜めた。

 

「それで、戦略捜査室の方はどうですか?」

「テロに繋がる人物を特定したと報告を受けました。目下捜索中とのことです。後、情報を持っている容疑者の確保に動いているそうです」

「鴻上補佐官、明日テロが起きる前にテロリストを確保できると思いますか?」

 

 首相は補佐官を真っ直ぐに見て尋ねた。

 

 鴻上は執務机に向き合う首相と、その背に掲げられた日の丸の国旗を見て顔を顰めた。

 

「正直な所……テロが起こる可能性は非常に高いでしょう。しかし、NSIが事態を掌握しつつあるのも事実です。確かなことは何も言えませんが……今は彼らを信じ、私たちは人事を尽くすのみです」

 

「そして、天命を待つと。もどかしいですね」

 

 首相は拳を握って額を叩いた。

 

「はい」

 

 鴻上はただ静かに頷いた。

 

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