iの終わりに~29話

i イデア

 

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 夢の中へ沈んだ。

 僕という一滴が広大な海に落ちて、とけだし、まざりあうみたいに。。

 眠りの深いところに深いとこへ沈むと、そこが子供たちの夢の世界への入り口――

 

 ――イデアの“エントランス”。

 

 僕たちはここで理想の自分を創り上げた。

 好きな役を選び、好きな衣装を着て、好きな台本を演じ、好きな世界に沈んで行った。

 エントランスに入るこの瞬間は――まるでチケットを片手に映画館や遊園地に入っていくみたいで、とてもわくわくした。

素敵なことが、はじまる予感がした。

 だけど、今――エントランスは淀んでいた。

深く濁っていた。

 かつて、この場所は華やいでいた。

たくさんの子供たちが、それぞれに思い望む理想の姿でこの場所に立ち、時に誰かを待ち、時に誰かと手を握り、そしてそれぞれ夢の中に沈んでいった。旅の切符を手にして隣に座った人と旅に出るように、それぞれに物語の中に沈んでいった。

 かつて、この場所は眩いくらいに輝いていた。

 だけど、今この場所は誰もいないからっぽのがらんどうだった。

暗闇に閉ざされ、痛いくらいの静寂が腰を下ろし、寂しくて悲しげながらんどうだった。

 部屋の灯りを点すように、僕はこのエントランスに光を呼び込んだ。

 そして、僕はエントランスを創造した。

 ハックルベリー・フィンのマンションのエントランス似せて。

 いずれ物悲しい音とともに、そのの扉が開いた。

 無人のエレベーターの中に入り、イデアの底に沈むための――

 

 ――彼女に続くための十三階のボタンを押した。

 

 

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