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仕事をやめるたった一つのやり方~11話

仕事をやめるたった一つのやり方 小説

第11話 尋問

本日もカクヨムのミステリーランキング入れました。

ありがとうございます!

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kakuhaji.hateblo.jp

 第一話はこちらか読めます ↑

 

「――鳩原っ」

 

 衛宮は部屋の中に侵入する同時に大声を上げた。

 デスクの前に腰を下ろした鳩原を威嚇するように睨みつけ、その両手にはすでに拳銃が握られていた。しっかりと狙いをつけ、いつでも射撃できる体勢だった。

 

「なっ、何だ、君は?」

 

 鳩原は椅子の上で飛び上がり、部屋に雪崩込んできた侵入者を驚愕の眼で凝視した。

 一郎は衛宮がすでに銃を構えていることに驚きながらも、言われた通り部屋の施錠を済ませた。

 

「ひっ、人を呼ぶぞ――」

 

 慌てた鳩原がデスクの上に置かれた固定電話に手を伸ばそうとした瞬間、銃声と共に固定電話が弾け飛んだ。

 

「ひー」

 

 鳩原は悲鳴と共に手を引き、ひっくり返るように椅子に腰を下ろし直した。

 

「勝手な真似はするな。次は当てるぞ?」

 

 衛宮が低くどすの利いた声で言い、鳩原を睨みつけた。

 

「うっ、撃つな。何が目的なんだ? 金か……それとも社の情報か? きっ、君は鈴木一郎? どうしてここに、君は――」

 

 鳩原は怯えた表情で衛宮を見た後、その奥にいる一郎に気が付いた。まるで幽霊でも見たかのように我が目を疑いながら。。

 そして、ようやく事態を呑み込んで狼狽した。

 

「……いや、私は……何も知らない。君のことだって、私は関係ない。私は何もしてない」

「鈴木一郎に濡れ衣を着せるつもりだったみたいだが、当てが外れたな?」

「がっ」

 

 鳩原は言葉ではなく空気の塊を吐き出した。その怯えた目は驚愕で見開かれ、皺の刻まれた顔は蒼白としていた。

 そんな鳩原の様子を見て、一郎は衛宮の言ってことが全て正しかったのだと認識した。

 

 自分はテロの濡れ衣を着せられて殺されるところだったのだと。

 

「お前が明日起きるテロに加担していることが分かっている。正直に知っていることを全て話してテロリストへつながる証拠を出せば、死刑は間逃れさせてやる」

 

 衛宮は鳩原に銃を突きつけながら近づいた。

 

「しっ、知らない。私は何も知らない。私には黙秘権がある。弁護士を呼べ。そうだっ……それに令状だ。逮捕状は持っているのか?」

 

 みっともなく大声を上げた鳩原の言葉が、鈍い音と共に消し飛んだ。

 

「――がはっ」

 

 鳩原の顔面が大きく仰け反った。

 鳩原は何が起こったの分らないと目の前の衛宮を見据え、ようやく自分が顔面を殴打され事に気付いた。痛みが後から襲い掛かり、恐怖に顔を歪ませた。

 衛宮は銃の先の鳩原のこめかみに当て、自らの顔を近づけた。

 

「鵜飼に何を吹きこまれた知らないが、あまり調子乗るなよ。僕は警察じゃないし、お前の権利を尊重するつもりない」

 

 衛宮は無慈悲に言って銃口を強く押し当てる。

 

「もう一度聞くぞ。お前が知っていることを話せ」

「……ひっ。しっ、知らない。本当に知らないんだ。頼む……撃たないでくれ。金ならいくらでも払う」

 

 鳩原は後退した額に大量の汗をかき、瞳を剥き出しにしながら懇願した。

 

「そうか――」

 

 衛宮はこめかみに当てた銃を離した。

 鳩原が安堵で大きな息を吐こうとした瞬間、耳に残る嫌な音が鳴った。

 

「ぎゃああああっ――――――――」

 

 鳩原の右手の小指が、本来曲がってはいけない方向に曲がっていた。

 衛宮は何の躊躇いもなく鳩原の小指を折り、そして痛みでのた打ち回る鳩原を押さえつけ、右手をデスクの上に固定した。

 

「次は薬指を折る」

 

 衛宮は固定した右手の薬指を掴んだ。

 

「その次は中指だ。足の指まで含めれば二十本ある。どこまで耐えられると思う?」

「衛宮、何やってるんだよ。こんなの拷問じゃないか?」

 

 一郎は痛みと恐怖で顔を歪める鳩原を見て声を荒げた。

 

「こいつは、お前を殺そうとした。それに明日テロを起こして、多くの日本国民を殺そうとしている。手加減をしている時間は無い」

「だからって、こんなやり方――」

「黙ってろ。いいか、鳩原? 次は薬指を折る」

 

 衛宮は握った薬指に力を込めた。

 

「分った話す。話すからやめてくれ」

 

 鳩原は叫ぶように言った。その汗と涙と鼻水と涎に塗れた顔には、観念の色が濃く浮かんでいた。

 

「私は殺そうとなんかしていない。知らなかったんだ」

 

 鳩原は滔々と話を始めた。

 

「鈴木君に濡れ衣を着せると聞かされていたが……まさか殺すだなんて知らなかった。それに、テロのことだって……私は何も知らない」

「この期に及んで言い逃れはよせ――」

 

 衛宮は再び薬指に力を込めた。

 

「ひいいっ、知っていることは全て話す。だから……もう止めてくれ。知らないと言ったのは……テロの内容に関することだ。私は鵜飼室長に話を持ちかけられた。初めはテロとは知らなかったんだ。気が付いたら、引き返せないところまで来ていた」

「鵜飼に何をさせられた?」

「私が行ったのは…………」

 

 そこで鳩原は躊躇った。

 

「早く言えっ」

「にゅっ、入室記録の改竄などだ。私はテロには直接かかわっていない」

「入室記録? 誰か外部の人間を招き入れたのかの?」

「そうだ。鵜飼室長に指定された人員を社に入室させ、その入室記録を抹消することが、私の主な仕事だった」

「誰だ? 誰を入室させた」

「知らない。直接は顔を合わせてない」

 

 衛宮は薬指に力を入れ直した。

 

「本当だ。知っていることは全部話している。中国人だった。中国語でやり取りをしたいた」

「直接は顔を合わせていないのに、何故中国語と分った?」

 

 衛宮は話しの矛盾を見つけて追及した。

 

「一度だけ入室の手続きが上手くいかずに、私が直接対応したことがあった。その時、男たちは中国語を喋っていた」

 

 衛宮と一郎の脳裏に先ほど一郎を襲った男のことが過り、鳩原の話の信憑性を高めた。

 

「他に何か知っていることは? 男たちに繋がる事、テロに関する事、何でもいい?」

「男たちは我が社の設備を使い、開発室で何かのシステムか……プログラムを作成していた。国の政府機関か、または厳重に管理されたシステムに侵入するための何かだ」

「具台的には何だ?」

「分らない。私はただ……明日テロが起こるとだけ聞かされた。それだけだ。信じてくれ」

 

 鳩原は縋りつように衛宮を見た。

 

「鵜飼室長は、私に普段通りに行動するようにと。そうすれば、私が怪しまれることはないと」

「鵜飼なら、すでに証拠を消して逃亡している」

「そんな……嘘だ?」

「なら、鵜飼のアメリカ行きの話は聞いていたか?」

「アメリカ? 知らない。私は何も聞いていない」

 

 鳩原は信じられないと首を振った。

 

「まぁ、恐らくアメリカ行きはフェイクだろう。今頃どこかの国に高跳びしているか、テロリストと合流しているかのどちらかだ。最初からお前はスケープゴート。捨て駒だったんだよ」

 

 そこまで聞くと、鳩原は全てのことを悟ったように項垂れた。この数分のやり取りで、一回り齢を取ったようにしわがれていた。後は死を待つだけの老人のように。

 

「他に何か知っていることはあるか?」

「そう言えば、中国語で何度も『蛟竜こうりゅう』という単語が出ていた」

「蛟竜? 本当に蛟竜って言ったのか?」

 

 衛宮はそこで表情を深刻なものにし、鳩原に詰め寄った。

 

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