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仕事をやめるたった一つのやり方~9話

仕事をやめるたった一つのやり方 小説

第9話 必要な措置

2016/3・18日の『カクヨム』ランキングで18位になりました。

これも読んでくれた皆さんのおかげです!!

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kakuhaji.hateblo.jp

 第1話はこちらから読めます ↑

 

「二人組の社員をこの路地まで連れてきてくれ」

「……二人組の社員? どうやって?」

「やり方は任せる。とにかくやってくれ」

「分ったよ……」

 

 一郎は渋々と言って歩き出した。

 

イチロー、出来れば男二人組にしてくれ」

 

 一郎は「分った」と頷いてマトリクス社のある通りを歩きだした。

 通りは帰宅ラッシュ時と重なって人通りが激しかった。

 汐留駅の周囲には大きな道路が幾つも走っている為、車の往来も多く、都市は喧騒に包まれていた。

 

「あ、あの――」

 

 一郎は緊張しながら二人組の男性に声をかけた。

 

「マトリクス社の……社員ですよね?」

「そうだけど?」

「何か?」

 

 振り返った二人の社員は、不思議な様子で一郎を見た。

 

「あの……俺もマトリクス社の社員で、それで少し困ったことがあって……助けてもらいたいんです」

 

 特に理由が見つからなかったため、一郎は曖昧な言葉を並べて説得にかかった。

その際に社員証を見せると、二人を大きく頷いた。

 

「同僚か?」

「俺たちにできることなら手を貸すぞ?」

 

 二人は快く同意し、一郎の後について来てくれた。

 営業部の社員で爽やかな雰囲気の二人組だった。

 

「ここなんですけど――」

 

 裏路地に連れていくと、鈍い音と共に一人の社員が地に崩れた。

 一郎が気付いた時には、衛宮はもう一人の男性社員を後ろから羽交い絞めにしていた。チョークスリーパーと呼ばれる首を絞める技で、完全に頸動脈が極まっていた。

 

「大丈夫だ。ゆっくり目を閉じろ。いいか? 一つ、二つ、三つ――」

「おいっ、何してるんだ?」

 

 首を絞めた男性の耳元で数字を数えている衛宮に向けて、一郎は怒鳴り声を上げた。

 

「静かにしろ。良しっ。気を失った。イチロー、そっちの男から社員証を取り出せ。その後で、このテープで手足を縛っておけ」

 

 一郎は衛宮に渡されたガムテープを受け取りながら、信じられないと目の前の光景を見た。

 

「何をぼけっとしてるんだ?」

 

 二人の男性が地面に転がっている。

 それを行った衛宮は素早く二人の社員証を手に入れると、何の迷いもなく二人をガムテープで拘束し始めた。

 

「おい衛宮、これは一体何なんだ? お前は……何をしてるんだ」

「お前と僕がマトリクス社に入るには、社員証が二ついる」

「社員証? 俺の社員証がある」

「お前の社員証を使えば、こっちの動きが知られる。それに、お前の社員証はすでに失効しているだろう。これは必要な措置だ」

「必要な措置? この二人は何も関係ないんだぞ?」

「明日この国でテロが起きれば――何十人、何百人、もっと多くの人が死ぬかもしれない。お前の命だってかかってるんだぞ?」

「それは、そうだけど? だからってこんなやり方――」

 

 一郎は路地の隅に横たわった二人の社員を見て胸が痛んだ。

 

「行くぞ」

 

 衛宮が歩きだし、一郎はその背中を追った。

 

「あの二人は大丈夫なんだろう?」

「心配ない。しばらくすれば目を覚ます」

「お前……いつもこんなことをしているのか?」

「必要なことは何でもやるさ」

 

 迷いなくそう告げた衛宮を見た一郎は、自分はとんでもない人間に助けを求めたのかもしれないと思った。

 

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