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ひとりぼっちのソユーズ Fly Me to the Moon~1

intro ユーリヤ

 幼いころに出会った外国の女の子ユーリヤ。彼女は僕にとって特別な女の子で、僕の女王様だった。彼女は僕のことを『スプートニク』と呼び、僕に色々なことを教えてくれた。宇宙のこと、月のこと、アームストロングっていう嘘っぱちのこと。彼女はいつも『北方四島』を賭けた。いつしか僕たちはばらなたになり、彼女を一人ぼっちにしてしまった。

 だから、あの月の綺麗な夜――僕は思ったんだ。僕は月向うんだった。君を月に連れて行くために。君をひとりぼっちにしないために。

少し泣ける短編小説です。
全9話で直ぐに完結します。


以前とある電子書籍雑誌に掲載してもらった短編なのですが、腐らせておくにはもったいないなあと思い、今回引っ張り出してきました。

よろしくお願いします。

 

 intro

 

 ユーリヤのことを今も僕は思いだす。

 もう、あれからどれくらいたったんだろうって。

 

 そのたびに、ずいぶんたったんだなって――過ぎてしまった時間の膨大さに途方に暮れてしまう。

 そして、浮かび上がる思い出の数々に耳をかたむけて、手を伸ばしてしまう。

 

 ユーリヤが言ったみたいに、僕たちはずいぶん遠くまで行けるようになったんだよ。いろいろな問題を曖昧にして、棚に上げてしまったままだけど。

 

 僕はユーリヤの『スプートニク』だった。

 いつも君のそばにいた。君の話を聞いて、君の背中を眺めて、君の棚引かせる長い髪を猫のように追いかけていた。

 

 こんなことを考え出すと、いろいろめそめそした気持ちになっちゃうから、本当はもっと楽しいことでも考えて、これから目の前に広がるはずの光景に胸をときめかせたり、隣に腰を下ろしているクルーにジョークの一つでもかましたりしたほうがいいと思うんだけど、やっぱり考えずにはいられなかった。

 

 だって――僕はもう一度ユーリヤの背中を追って、もう一度ユーリヤの『スプートニク』になりたくて、君を『ひとりぼっち』のままにしておきたくなくて、今この場所にいるんだから。

 

 そろそろカウントダウンが聞こえてくる。

 

 僕は目をつぶって両手を強く組み合わせた。

 それは、はたから見れば神様に祈っているように見えたかもしれない――

 

 ――だけど、僕は絶対に神様に祈ることはないんだ。

 

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