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『カクヨム』でも『小説家になろう』でも大人気――『異世界もの』というジャンルの正体と物語においての役割! その2

『カクヨム』でも『小説家になろう』でも大人気――『異世界もの』というジャンルの正体と物語においての役割! その1の続きです。

 

まずは『その1』からお読みください ↓

 

 

kakuhaji.hateblo.jp

 

 

その1の続きです。

 

もちろん、ネットの住人だって現実世界で生きているわけで、現実では『けいおん』や『俺妹』、『はがない』、『アイドルマスター』、『きんいろモザイク』などを楽しんではいるのですが、そこでは満たされない欲望を――ネットの小説に望んだのではないでしょうか?

 

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おそらくネットで『異世界もの』を書き始めた初期のネット小説家たちは、80年代、90年代に『異世界もの』や『ファンタジーもの』のアニメや小説などに触れ、実際に楽しんできた世代だと思います。

 

自分たちが楽しんできたものを、現在のネットの住人に向けて形を整え直したのが、今の『異世界ものの』ジャンルなのではないでしょうか? (ここでもジャンルが引き継がれることで、新しいジャンルに変化していくという様子が見てとれます)

 

つまり現在のネットにおける『異世界もの』の流行は――基本的に80年代、90年代の先祖がえりであり、その際に新しい要素が加わった『キメラ的』なジャンルなのではないかと思います。

 

しかし、ネットで書かれ、ネット読者に向けて書かれることで――新しい『異世界ものの』ジャンルは、それまでの『異世界ものの』と一線をかくしていきます。

 

その根拠となるのは――先程紹介した80年代、90年代の『異世界もの』と、今現在の『異世界もの』の明確な違いです。

 

今現在、ネットを中心に読まれ、楽しまれている異世界ものの多くは、『ゲーム的』であり――そして異世界に移動した主人公Xに『限りなく優しく、都合の良い世界』であるということです

 

まず『ゲーム的』であるという点について述べると――これは、ネット小説でもう一つの人気ジャンルである『VRMMО』ものとの融合が考えられると思います。ここでも『キメラ的』な要素が出現します。

 

『ステータス』のようなシステムが導入されていたり、スキルや技、職業、レベルなどの要素を取り入れることで、物語を分りやすく、そして『ゲーム的』に進めているけるという利点があります。多くの作品は、日本独自の和製RPG――とくに『ドラゴンクエスト』などの影響が強く、そのお約束の積み重ねがこのジャンルの人気を支えているのでしょう。

 

そして主人公に『限りなく優しく、都合の良い世界』――これは、主人公が異世界に移動する際、『特殊な能力』を授けられたり、『ステータス』が最初から『カンスト』していたり、現代の知識が困難を突破する上でダイレクトに役に立つという点が上げられます。

 

これらの要素の多くも『ゲーム的』といえるでしょう。

 

そして、ここからが『異世界もの』の2大ジャンルにして2大派閥――『異世界召喚』と、『異世界転生』な話なのですが、『異世界召喚』はこれまで多数の作品を紹介してきました。

 

しかし、『異世界転生』に関してはここで初めて紹介します。

 

有名な作品としては、小説家になろうで不動のトップに君臨し続ける――

 

無職転生 - 異世界行ったら本気だす

 

この作品が上げられると思います。

 

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『異世界転生』とは――主人公Xが現実Aから異世界Bに移動する際に、別の人間(赤ん坊、性転換、別の種族)などに生まれ変わるという大きな特徴があります。

 

この『異世界転生』というジャンルル、基本的にネット小説にしか見られないジャンルであり、このジャンルだけに絞って言えば、間違いなくネット小説から生まれ、そして流行ったと言えるでしょう。

 

おそらく、初期の『異世界もの』のジャンルを楽み、その後色々なジャンルを経験し、再最終的に『異世界もの』に返ってくる過程で、色々なものを取り込み、またネット特有の文化や雰囲気などを融合した結果が――この『異世界転生』というジャンルの誕生なのではないかと思います。

 

まさに『キメラ的』に生まれてきた『ジャンル的私生児』といえるのではないでしょうか?

 

基本的には『異世界召喚』も『異世界転生』も物語の構造自体は一緒なのですが――『別の何かになり変わる』、『新しく人生をやり直す』という点は、『異世界転生』に見られるやはり大きな特徴であると言えます。

 

これはネットゲーム――とくにMMОRPGなどにおける『キャラクターメイキング』の要素を引き継ぎつつ、物語の中に上手く落し込んでいるのだと思います。

 

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この『別の何かになり代わる』、『新しく人生をやり直す』という要素が――ネットの小説では重要なように思えるのです。

 

つまり、手軽に読者の欲望を満たせるという利点があるのです。

 

しかも、現実の知識や体験をベースにしているので感情移入もしやすく――さらに『ゲーム的』に物語が展開するため、読者は非常にわかりやすく物語を読み進めることができるのです。

 

チュートリアル的』であり、『クエスト的』なのです。

そして『ゲーム的』である以上、それはからなず『クリアできる物語』なのです。

 

この部分に、主人公Xにとって『限りなく優しく、都合の良い世界』であることの理由が隠れているように思います!

 

ここまで読んでくれた勘の鋭い読者なら、すでに気が付いていると思いますが――ネットにおける『異世界もの』の小説というのは、その多くの部分が『ゲーム的』であり、多くの『お約束』に基づいているのだ。

 

つまり、『エヴァンゲリオン』によって多くの人が現実を舞台をした物語の中に帰り、しかし満たされない欲望を満たすために新しいタイプの『異世界もの』が出現しては見たものの――

 

多くの読者は『異世界』にいるのではなく、モニタの前に座って『ゲーム的』に物語を閲覧しているのである。

 

目の前に素晴らしい『異世界』が広がっている。心躍る冒険が始まろうとしている。大切な仲間が、愛しべきヒロインがいる。現実では叶えられなかった夢や希望、そして願いが――望んだものの全てが、物語の中にある。

 

それなのに、僕たちの『魂』は現実に留まったまま、安全圏であるモニター越しに物語を眺めているのだ。

 

つまり、『異世界』といものを以前の異世界――80年代、90年代よりも『メタ的』に認識して、仮想的な空間とし扱っているのである。

 

これは、現代の読者を簡単に納得させ、物語に引き込むために確立された優れた創作手法であり――読者の『欲望』や『願望』に直結することで共感を得るという洗練された技術であると思う。

 

『異世界』に行くことで人生をやり直す。

 

現実で叶えられなかったもの、現実で手に入れらかなかったもの、現実でなくしてしまったもの――それらの全てを『異世界』で手に入れる。

 

こんなに分かりやすく、こんなにも読者の欲望にダイレクトに直結する手法があるだろうか?

 

おそらく、そんな手法を現実からの逃避だと――都合の良い物語に逃げているだけだと、声を上げる人もいると思う。

 

しかし、僕はそうは思いません。

 

これは素晴らしい創作の手法ですし、その手法は日々洗練され言っているように思います。

 

(もちろん『分りやすさ』と『お約束』を追及し過ぎた結果、少しずつ一見さんが寄り付きづらい『ジャンル』になりつつあるのは事実ですが。つまりお約束を知っている人しか楽しめなくなっている!)

 

ここで、異世界ものの始祖である『ナルニア国物語』をもう一度思い出してほしいのです。

 

物語の主人公であるペベンシー家の4人きょうだいは、戦争が原因で疎開してきます。そして『異世界』へと続くクローゼットの扉を開けるのです。

 

つまり、物語の冒頭から『逃避』の物語になっているのです。そしてルイスが『ナルニア国物語』を出版したのが1950年。つまり第二次世界大戦の戦火から、完全に回復しきっていない混乱の中で、この物語を出版したのです。

 

つまりルイスはこの物語を多くの子供たちに向けて――『逃避』と『新しい希望』の物語として書いたのではないでしょうか?

 

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『逃避』と『希望』。

そして、『人生をやり直す』ということ。

 

それはネット小説――『異世界もの』のジャンルに内包されている普遍的なテーマであり、多くの読者の欲望ではないかと思います。 

 

一度、現実の世界に帰った多くの人が――現実にいたままモニタ越しに『異世界』を旅行する物語の数々。

 

いやー、素晴らしいじゃないですか?

 

ここで、今回のコラムの結論というか、雑感を発表したいと思います。

 

 

『異世界もの』のジャンルは逃避と希望の物語――

 

そして、モニタ越しに欲望を満たすことができる旅行記である!

 

 

 

いやー、まとまったようで、まとまってねー気がするなー・・・ 

しかも長くなり過ぎただろー。

 

6000文字を超える記事なんてお手軽じゃないし、もっと短くまとめられるようにならないとなー。

 

と、今回の反省も述べた所で、今回のコラムは終了です。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

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kakuyomu.jp

 

『異世界もの』は書いていませんが、僕の小説もよろしくお願いします!

 

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